掛詞を見抜く! ―共通テストの問題を例に―


 こんにちは。国語科の高倉です。みなさん、古文の勉強は順調ですか?

 今回は和歌の表現技巧の一つ、〝掛詞〟のお話です。和歌の技法は共通テストでも頻出の分野ですが、そのわりに「なんとなくのフィーリング」で解いてしまう生徒が多いんです。これはもったいない。そこで今回は「掛詞」について、共通テストの問題を使って分かりやすく説明します。まずは問題にチャレンジ。出典は2023年度大学入試共通テスト(改題)です。

本文

 人々あまた(注1)八幡の御神楽に参りたりけるに、こと果てて又の日、(注2)別当法印光清が堂の池の釣殿に人々ゐなみて遊びけるに、「光清、連歌作ることなむ得たることとおぼゆる。ただいま連歌付けばや」など申しゐたりけるに、かたのごとくとて申したりける、

A 釣殿の下には(いを)やすまざらむ  (注3)俊重

 光清しきりに案じけれども、え付けでやみにしことなど、帰りて語りしかば、試みにとて、

B (注4)うつばりの影そこに見えつつ  俊頼

(注) 1 八幡の御神楽 ― 石清水八幡宮において、神をまつるために歌舞を奏する催し。

   2 別当法印 ― 「別当」はここでは石清水八幡宮の長官。「法印」は最高の僧位。

   3 俊重 ― 源俊頼の子。

   4 うつばり ― 屋根の重みを支えるための梁。

問題 AとBの和歌の関係ついて、掛詞に注目した考察としてもっとも適当なものを次の中から選びなさい。

① 俊重が、釣殿の下にいる魚は心を休めることもできないだろうかと詠んだのに対して、俊頼は、「うつばり」に「鬱」を掛けて、梁の影にあたるような場所だと、魚の気持ちも沈んでしまうよね、と付けている。

② 俊重が、「すむ」に「澄む」を掛けて、水は澄みきっているのに魚の姿は見えないと詠んだのに対して、俊頼は、「そこ」に「あなた」という意味を掛けて、そこにあなたの姿が見えたからだよ、と付けている

③ 俊重が、釣殿の下には魚が住んでいないのだろうかと詠んだのに対して、俊頼は、釣殿の「うつばり」に「針」の意味を掛けて、池の水底には釣殿の梁ならぬ釣針が映って見えるからね、と付けている

 さて、みなさんは普段どのように掛詞を見つけていますか?一番禁物なのは、それらしい意味を代入して意味が通るか確認する、という方法です。このやり方から脱却しない限り、掛詞を正しく見つけることはまず無理です。掛詞を見抜くには、まず素直に和歌を解釈することです。そして、意味のつながりがおかしい箇所を探します。そして、その違和感を解消するもう一つの意味を考えていくのです。

 今回、Aの歌は「釣殿の下に魚は住んでいないのか」と問いかけています。これに対してBは「うつばりの影がそこに見えている」と答えています。でも「魚が住んでいない」と「梁が映る」では意味がつながりませんよね。このズレ、違和感こそが、掛詞発見のサインです。

 魚がいない理由を考えてみましょう。魚は何に引っかかる? そう、「針」です。つまり、「うつばり」の「ばり」に「針」の意味を掛けているのです。釣殿の梁ならぬ釣針が映って見える――だから魚はいない。ここで意味の流れが一気に通るのです! 掛詞発見!このように掛詞とは決してそれらしい意味を代入して決めるものではありません。真っ当な解釈の流れの中で自然にもう一つの意味が導かれるとき、それが掛詞発見の瞬間です。〝代入ではなく導出〟これが掛詞を見つける最大のポイントです。

 答えはもちろん③です。①や②のように「鬱」や「あなた」を無理に代入しても、文脈の支えがなければ掛詞にはなりません。③のように文脈から意味が導かれる。――そこにこそ、和歌の妙があります。

 掛詞の見抜き方、それは〝代入ではなく導出〟です。違和感を逆手に取り、掛詞をぜひ、正確に見抜けるようになってくださいね!

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