「古文を学ぶ意味は何ですか?」――この質問、実は、生徒より大人の方から聞かれることが多いんです。今回は、この問いを2025年度の共通テストを用いて考えてみたいと思います。
本文は、光源氏(院)が、病に倒れ生死の境をさまよう妻を必死に見守る場面です。
本文
院も、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだにえ見ずなりにけることの悔しく悲しきを」と思しまどへるさま、とまりたまふべきにもあらぬを見たてまつる心地ども、ただ推しはかるべし。(『源氏物語』)
太字部では「もう一度だけ、目を合わせてください」と源氏が懇願しています。そこには、愛する人を失う悲しみと同時に妻の心に寄り添えなかった後悔とが入り混じっています。会話文ラストの「悔しき悲しきを」という表現には、その二つの感情が絡み合い、どちらとも言い切れない複雑な心が映っています。
そして語り手も「ただ推しはかるべし」とだけ述べ、読者に想像の余地を残したのです。
この場面に象徴されるように、古文を読むとは、〝一つに決められない思い〟を受け止めることだと私は考えています。曖昧さに耐えながら、他人の心を推し量る――。この「決めつけない力」こそ、現代を生きる私たちに必要な力なのではないでしょうか?
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