ココロを読む


 こんにちは。国語科の高倉です。共通テストまで残り二か月。模試の結果に一喜一憂している人もいるかと思います。けれども、この時期だからこそ本質を捉える勉強を進めましょう。焦る気持ちはわかります。でも、土台を固めることも大切です。

 今回のテーマは小説です。評論は論理の筋道を追って読むのに対し、小説ではどうしても“雰囲気”で答えてしまう生徒が少なくありません。もちろん小説には想像力や感覚も大切ですが、試験である以上、拠りどころとなる読み方・解き方があります。

 今回はその考え方を一つ、ご紹介します。まずは解きましょう。問題は2025年度の共通テスト本試験(改題)です。

 次の文章は、蜂飼耳「繭の遊戯」(二〇〇五年発表)の一節である。「おじさん」は、小屋に籠もって何かを作っていることが多かった。その小屋に幼いころの「わたし」はよく遊びに行っていた。これを読んで、後の問いに答えよ。

 壁に、ギターが掛けられていた。触りたい。「あれ取って」。すぐには取ってもらえない。「あれ、取ってよ。ちょっとだけ」。おじさんは、取るかどうかわざと迷うふりをしながら、金具を外しギターを下ろす。受け取り、抱えてみる。鳴らしてみる。どんなメロディーにもなりはしない。つまらないというより、不安だった。自分でばら撒いたおかしな音に、自分で不安になるのだった。「返す」「もう、いいの」。なにか弾いてよ。頼むと弾いてくれる。いつも同じ曲だ。最後まで全部、聞いたことはない。いつも途中で、「あれ」と首を傾げる。「あれ、あれ」。凧が落下するときのように、見えない糸が不意に弛みはじめて、ぷつんと止まる。「あれ、わからなくなった」。いつものことだが、いつも、がっかりする。がっかり、という気もちには、かわいそうだ、と思う気もちが混ざっていた。生意気にも。五つや六つの子どもでも、そうしてこっそり、大人を哀れむときがあるのだ。気まずくなり、いつも同じ質問をする。「なんていう曲」。つづきがわからないということは、どちらにもわかっていて、暗黙の了解なのに、おじさんは目を泳がせて、音を探すふりをする。心をこめるように爪弾く。

問 太線部「音を探すふりをする。心をこめるように爪弾く。」とあるが、ここで「わたし」が捉えているおじさんの様子はどのようなものか。最も適当なものを、次の①~③のうちから選びなさい。

① 自分が途中までしか弾けないことを取り繕うために、弦を鳴らし、身を入れて曲の続きを思い出そうとしているかのように見せている。

② 弾き切ることこそできないが大切な曲であることを「わたし」に伝えるために、記憶をたどって、一音一音探るかのように見せている。

③ 曲が弾けなくて気落ちしていることを「わたし」に悟らせないために、曲を想起しつつ、追憶にひたっているかのように見せている。

 いかがでしたか? 小説では登場人物の心情や思考を読み取る問題が主に出題されます。今回も「『わたし』が捉えているおじさんの様子」という、わたしの認識が問われていますね。

 では、わたしの認識をどのように考えましょうか? ここで鍵となるのは「視点の一致」という考え方です。もっとかみ砕くと「なったつもり」を意識してみてください。なぜなら、登場人物の気持ちや考えは、その人が今見えている景色の中でしか生まれないからです。読者のみなさんはぜひ「わたし」の視点で、「わたし」になったつもりで、「おじさん」を見てみてください。「わたし」の目の前で、「おじさん」はどんな姿をしていますか?

 「あれ?」と首を傾げている「おじさん」、目を泳がせている「おじさん」。そして「わたし」はそんな「おじさん」を「可哀そう」を感じているんですよ。目の前には、演奏が途切れてしまったけど、なんとか演奏を続けようと、あたふたとごまかそうとしている、そんな「おじさん」の様子が浮かんできませんか?

 さて正解は――もちろん①です。②曲の大切さを分からせよう③気落ちしている様子を隠そうといった状況は、「わたし」が実際に目にした場面には見られません。小説問題とは「気持ちを当てる問題」ではなく、「視点をそろえる問題」です。共通テストの小説対策に困っている方は、この「視点の一致」という考え方を是非とも実践してみてくださいね!

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